Method of Housing
Method of Housing
部位別に現代住宅を考える・・・ 住宅論はその昔から様々です。
ここでは機能、用途に私の主観を加えて分析します。(不定期更新)
【アプローチ〜ポーチ】
アプローチとは、門から玄関前に至る経路を示します。
昔は、アプローチが長く、直接玄関が見えない方が良いとされていました。
料亭みたいで高級感がありますね。
今は逆に玄関が見通せた方が防犯上は良いと考えられています。
個人的には、敷地の許す限りゆとりを持たせたいと考えています。
訪問者に対して「迎え入れる空間」は気持ちを落ち着かせる「場」でもあります。
ポーチとは、玄関先の軒下空間を指します。
できれば、大人二人が身繕い可能なスペースが欲しいです。
雨の日には傘立てが置かれるでしょうし、傘を拡げたり畳んだりする際の余裕も欲しいものです。
【玄 関】
世界では、意外にも室内で靴を脱ぐ習慣のある国は多いと聞いています。
玄関は、ある意味「結界」であると考えています。
本来の意味からすれば門が該当しますが、外と内の分かれ目が「靴を脱ぐ」という行為で明確になる場所だからです。
機能的には、靴や防寒具の着脱およびそれらの収納が必要となります。
場合によっては、屋外で使用する道具等の収納も期待されます。
玄関の土間は、やはり大人二人が身繕い可能なスペースが必要です。
収納はできれば別に設けたいところです。
シューズクローゼットがあれば言うことはありません。
余裕があれば、2WAYのシューズクローゼットで公私が分けられれば、なお良いと思います。
ミニマムで玄関2帖、クローゼット1帖あれば何とかなります。
最近はどんどんワンルーム形式が進んで、玄関の存在すら危うくなっています。
いくら狭小住宅とはいえ、外と内の縁を切ることは大切ではないかと考えています。
2WAYタイプのシューズクローゼットの例
玄関横に設けられた内玄関のようなしつらえ。
コートなどを掛けるハンガーパイプも設置しています。
十分な収納力があるため、玄関には下駄箱なるものは存在しません。
建ぺい率の制限があるため、ポーチ庇が1mを超えることができません。そのため、玄関ドアの位置をくぼませてポーチ面積を確保しています。
家族の普段履きが散らからないため、常に片付いた玄関となっています。
小さくてもシューズクローゼット
玄関横に設けられた最小限のタイプ。
広さは1帖ありません。
棚の奥行きを2通りにしています。
25cmの棚は斜めに靴を収納します。
40cmの棚は靴を箱に入れた状態で収納できます。
【リビングルーム】
様々な定義付けがなされていますが、これも戦後アメリカから輸入された「べき的」空間ですね。
戦後復興において、住宅の近代化?を計るため「スタイル」から導入されたような気がします。
日本で言えば「茶の間」になるのでしょうか。
最近では特に限定的な使い方をしなくなっています。
余程の規模が無い限り、他の部屋と共通化する場合がほとんどになりました。
LDKとかLDなどというパターンが出現し、一部和室の要素(畳)まで取り込むことも。
そう言えば「応接間」って聞かなくなりましたね〜
昔、ちょっと立派なお宅にお邪魔すると応接間があって、そこには立派なソファと飾り棚、それに
なぜかピアノもあったりして。
リビングって応接の用途には向かない気がするのは私だけでしょうか。
余程でない限り接客はダイニングで済ませることが多いのではないでしょうか。
ソファって、かしこまるよりダラーっとしてテレビを見るのに向いているような気がします。
■家族を拘束する場■
子どもの頃、食事が終わってダラダラとテレビを見ていると「勉強は?」って追い出された記憶があります。
現代では、食事が済むとさっさと自室に入り込んで何をしているのか分からない・・・
形式論はともかく、家族が良くも悪しきも干渉し合う空間が「茶の間」だったような気がします。
アメリカンホームドラマというより、寺内貫太郎一家(古っ!)のような。
宮脇檀さんが「ファミリールーム」という表現をして、家族にとって居心地の良い空間という定義付けをされていました。多分、伝統的な茶の間を少しだけ広めに解釈した形であると思います。
字面でいえば「干渉し合う」より「居心地の良い」のほうが美しいですね。
便宜上、リビングという表現はしますが、心の中ではファミリールームという概念です。
■ファミリールームに必要なしつらえ■
居心地の良さは人それぞれです。ゴロンと横になりたい人もいれば、ダラーっとソファに身を預けたい人もいます。それにより空間のしつらえは変化します。
ソファが良いのであれば、天井は少し高めに、畳が良いのであれば逆に少し低めの方が落ち着いた雰囲気になります。
最近はテレビが大きく薄くなりました。しかし、AVに対応した家具は必要でしょう。
それ以外に、日常的な小物や新聞、雑誌等の収納も必要になります。
日常生活を顧みれば、必要なしつらえは浮かび上がってきます。
【ダイニングルーム】
この部屋を独立して設ける場合はまずありません。
リビングと共用するか、あるいはキッチンと共用する場合がほとんどです。
また、簡単な応接もダイニングで済ませるケースが多いと思います。
■ダイニングテーブルと椅子■
畳に座卓を置いて食事をする、というケースはかなり少なくなりました。
そこで重要なのがダイニングテーブルと椅子です。
日本人の体型も大きく変化しました。椅子の生活にも馴染んでいます。留意点は以下の通りです。
・テーブルは可能な限り大きいサイズで。
食事だけでなく、新聞を拡げたり、子どもが宿題をしたり、あるいは家事も可能なように。
・テーブルの高さ設定は慎重に。
一般のテーブル高さは68cm〜72cm程度のものが主流です。
洋食(ナイフとフォークを使う)なら72cmと高めの方が使いやすいですが、和食なら68cmと
低めの方が使いやすいです。
日本の一般家庭では、まずナイフとフォークを使うことは少ないので低めの方がよいでしょう。
・椅子のサイズも慎重に。
必ず座ってみて、くつろげることを確認してください。
ゆったりめ座面(できれば、あぐらがかける大きさ)で、高さはテーブル高さ−25cmが標準と
なります。(68cmのテーブルなら座面高さは43cm程度)
購入される場合は、体に合うように加工してもらえるショップがよいでしょう。
当設計室の場合はオリジナルデザインで製作することも多くなっています。
■ダイニングルームに必要なしつらえ■
メインは上記食卓となりますが、問題は収納です。
食器をどこに置くか、すべてキッチンに納める方法もありますが、グラスや湯のみはダイニングの方が都合がよいのではないでしょうか。
また、パントリー(食品庫)的な収納も必要ですし、常備薬を含めた薬などの収納も必要です。
新聞や雑誌のマガジンラックも重宝します。
最近では壁掛けテレビを設置することも多くなりましたから、配線にも気を遣います。
照明計画の基本は、テーブル面を中心に明かりを集めることです。
換気対策も怠ってはなりません。
こう考えると、ダイニングとリビングを併せて「ファミリールーム」といった表現が適切かも知れませんね。
【和 室】
最近は和室の無い家も多くなりました。和室というキーワードで連想されるもの・・・
・畳、襖、障子、長押、床の間などの構成要素。
・仏間、客間、茶の間、茶室などの用途。
・昼寝、家事、接客、結納、法事などの使途。
その他、こたつ、蚊帳、葦戸などの季節感がイメージされますし、和室にまつわる様々な作法も思い出されます。
そう考えると日本の文化が衰退したような淋しい気持ちになります。
ただ、無作法で長時間正座ができない自分を顧みると情けなくもなりますが・・・。
さて、現代住宅で和室をしつらえるケースを考えてみましょう。
1)客間
・かしこまった接客が必要だったり、宿泊を伴う来客がある。
2)仏間
・仏壇がある。
3)茶室
・茶道を日常的に行う習慣がある。
茶道は別として、用途に分けて複数の和室を設けることは極めて稀なことです。
そして多くの場合、複数の用途を1室で済ませてしまうことになります。
また、普段使わないのはもったいないという理由でリビングの続きにする場合が多く見られます。
どれが正しい、という見方はできませんし、そこに住む人が良しとすればそれで良いのですが、
個人的には、状況の許す範囲で「ちゃんとした和室」が「独立して」あればいいなと思います。
一番奥まった場所で、仄暗い部屋。4.5帖もあればいいでしょうか。
少し趣味性がありますが、こういう「無駄」も一興かと思います。
【キッチン】
近頃では住宅の中心的位置を占める存在です。
単なる家事の作業空間というより、団らんの中心という考えすらある程です。
システムキッチンという言葉は使い古され、今流に言えばオーダーキッチンでしょうか。
家事の多くが機械化され、洗濯は洗剤を入れてボタンを押せば乾燥までやってくれます。
食洗機も性能が向上し、少ないエネルギーできれいに洗い上げてくれます。
冷凍食品の進化も著しく、レンジがあれば大抵のものがおいしく出来上がります。
総菜も野菜などのロスを考えると、出来合いのものをスーパーで買った方が効率的などと言われる始末です。
冷ややかな表現をすれば、キッチンの設計は簡単な動線と収納計画だけ、ということになります。
キッチン形式を考えるとき、そのお宅の暮らし方がリアルに表現されます。
傾向としては「開く」方向が主流です。
キッチンを独立させると「疎外感」があるからと敬遠されます。
しかし、よくよく考えてみると調理や後片付けに要する時間は確実に短縮されています。
立派なものがあっても、あまり使わないのではないでしょうか。
■キッチン設計で留意すること■
・家事動線は言うまでもなく、系統立てた十分な収納が適材適所で用意されること。
・設備機器やゴミ収納の「見え方」に注意をすること。
・掃除が楽にできること。
・機能的で、インテリアの邪魔にならないシンプルなデザイン。
当設計室では、ほとんどの場合がオリジナルデザインです。
しかし、ローコストの場合では市販のスタンダードタイプを採用することがあります。
【洗 面】
洗面、と一口に言ってもなかなか定義しづらい場所です。
最近ではパウダールームなどという表現も定着しました。
用途としては、文字通り「洗面」ですが、多くの場合、浴室に付随して設けられ、「脱衣」あるいは「洗濯」という行為、作業が行われます。
また、トイレを併設する場合も多くなっています。
ここでは実例をもとに考察してみます。
理想的な家事空間
2ボウルの洗面台に十分な収納。
洗濯は隣接する家事室で行います。
家事室には洗濯機とスロップシンクが並んでいます。また、天井には収納タイプの物干竿が設置されています。
家事室前はウッドデッキの敷かれたテラスが用意され、ガラス屋根のため雨天でも干し物が濡れることはありません。
家事室の仕上は、床:コルクタイル、壁、天井:珪藻土としていますから、湿気対策は万全です。
誰もが羨む配置と面積です。
洗面内にトイレを併設したタイプです。
洗面の前室にあたる部分はランドリーコーナーです。
3枚の引き戸の中に、洗濯機、スロップシンクそれに収納を設けています。この部分には、やはり天井に格納型の物干竿を設置しています。
洗面の背面は壁面収納としています。
天井まで家具を伸ばさないで、上部は換気と採光のための窓を設けています。高窓のため、オペレーターによる開閉を行います。
比較的、スタンダードなレイアウトです。
ランドリーコーナーは洗面の奥に配置しています。
仕切りはガラリタイプの引き戸としています。
そのため、道路側の窓を開放した状態でもプライバシーを確保しつつ換気ができます。
収納は、洗面台横に45cm幅のトールユニット、ミラーボックス、ランドリー上部に吊り戸棚を設けています。
■設計上のポイント■
・家族構成により必要な面積と設備の数は異なります。しかし、現状で多少不便さがあっても慎重な設定をしなければ、近い将来には過剰になることがほとんどです。
4〜5人家族で子どもが中高生だったりすると、朝のトイレと洗面所は「戦場」と化します。
しかし、文句を言いながらも何とかやり繰りするでしょうし、少しの工夫で改善されることも多々あります。
・トイレを併設する場合。
賛否両論です。
否定派は、トイレ使用時に洗面が使えない、あるいは風呂に入れない。臭いが気になる。
肯定派は、家族数が少ない、子どもが小さい、高齢者がいる、他にトイレがあるから。
複数箇所トイレがある場合、主たるトイレの使用頻度を考えてみましょう。
トイレに対する「思い入れ」はそれぞれなので限定的なことは言えませんが、(複数のトイレを前提として)個人的にはパウダールームにトイレがあるのは便利ではないかと思います。
だって、風呂に入る前必ずトイレに行きたくなるからです。
・収納は適材適所で十分に。
洗面の収納には気遣いが必要です。
下着やタオル、石けんやシャンプーなどのストック、洗顔用具や整髪道具・・・
使いたいところに効率良く収納があるべきです。
・ランドリーの落とし穴
ここ数年、洗濯機が進化し続けています。機能もさることながら、困るのはサイズの巨大化です。
設計者の性癖でしょうか、何でもキッチリ納まっていないと気が済みません。
洗濯機を載せる防水パンってデリカシーが足りません。(近頃は洗濯機排水を直接排水管に接続できるタイプの洗濯機もありますが)
家電製品なので当然耐用年数があります。また、家族構成の変化で、その容量に対する必要性も変化します。それに合わせて設計するのは至難の業です。
サイズを確認して設計した設置場所に、当初予定のものと異なる洗濯機が納入され、たちまち欠陥設計になった、という苦い経験もあります。
なるべく家電製品は目立たないように設置したいと考えているのですが・・・
【トイレ】
トイレに対する思い入れも様々です。
必要不可欠な設備ですが、変な話「良い思い」を連想される方は少ないのではないでしょうか。
特に体調が優れない場合など、できれば長居したくはありませんね。
また、逆に、トイレの居心地をとても大切にされる方もいらっしゃいます。
最近の便器って小さくありませんか?特にタンク一体型のもの。
コンパクトで掃除もしやすいのですが・・・
男の立場からすると、結構物言いがつくんですけど。
小さい便器で、しかも便座が「前割れ」ではありませんから窮屈な感じがします。
サイホンゼット方式が主流なので「小用」の際、落とし所に困ります。
住宅にも小便器の設置を!・・・時々ある要望です。
しかし、設置スペースや掃除の手間など、比較的早期に廃案になってしまいます。(淋)
もし、取り付けの方向になっても、これまた小型の便器で、余計に気を遣うような気がします。
小便器にしても、手洗器にしても設置するのであれば「とりあえず付けました」ではなくて、「ちゃんと使える」ものを設置したいと考えています。
手洗器・・・
ロータンクに付いているものや、小型のものでは手を洗う気になりません。
スペースの問題でやむを得ないケースが殆どですが、できればちゃんとした手洗器を付けて、ハンドソープなども置けるのが理想です。
■計画にあたって■
トイレ自体の空間サイズは一般的には3尺モジュールで1帖というのが多く見られます。
奥行きは最小でも内法で1.2mは欲しいです。しかし、その際は幅を多少広くした方が窮屈になりません。1.2mの奥行きなら幅は内法で85〜90cmは欲しいところです。
手洗器を付けるのであれば、もう少し必要ですが、ドアの位置等によっても変化しますし、サイズは慎重に検討しなければなりません。
収納の充実
トイレットペーパーや生理用品のストック、掃除道具や汚物入れ、場合によっては書棚。
書棚を除けば、その収納に扉を付けるのは必須になると考えています。
換気扇を常時運転する場合がほとんどですから、ホコリなどの侵入は想像以上に多くなりますし、家人以外の人目につきますからできるだけすっきりとしておきたいものです。
設備
前述の通り、状況が許せば小便器。
普通サイズの手洗器。
照明器具の照度は最小限でよいのですが、読書をしたいのであれば補助灯が必要です。
鏡もあればよいでしょう。
最近の住宅雑誌を見ると、トイレが居室(居間等)と連続していたり、ややもすると居室の一部だったりガラス張りだったり・・・おかしくありませんか?
仮に独り住まいであっても理解できません。